地生ラン、木に登る


ベニシュスラン

 車道の側の小さな谷川の向こう岸に、一抱えもある榎の古木があって、その幹にベニシュスランがついていました。 榎の幹にベニシュスランが咲いていた。 榎の幹にベニシュスランが咲いていた。 地面から1mから高いところは3mのあたりまで10株ほどが花を咲かせていました。 この谷川に沿った、湿っぽい林床でベニシュスランをよく見かけましたが、樹幹に着生しているのは初めてです。

ミヤマウズラ

 充分カメラに収めてから車道に戻り、なにげなく榎を見上げると、ここでもランらしきものが目に入りました。 高さ5mほどのところから枝がでていて、その上にひとかたまりに生えているのはミヤマウズラらしい! レンズをマクロから300mmの望遠にとりかえて撮ると、鮮明ではありませんが、ミヤマウズラの花茎7本が確認できました。

ずっと高い枝の上には、ミヤマウズラが群生していた。 ずっと高い枝の上には、ミヤマウズラが群生していた。  両方ともシュスラン属です。この属は日本に拾数種ありますが、唯一の例外であるツリシュスラン以外は、地生ランとされています。
 しかし、人間の画一的な線引きに抗議するかのように、ベニシュスランとミヤマウズラは地上を離れて、木の上で花を咲かせていました。

 シュスラン属は地生ランとはいっても、キンランやクマガイソウなどのように根が地中深く入り込んでいるわけではありません。 茎は落葉と地表の間を横に這い、茎からでた根も短く、わずかに腐葉土に入っている程度です。 苔むした古木の樹皮の上は、湿度などの条件が合えば、移住可能な場所といえるでしょう。

2012/1/25


ナツエビネ

 エビネ属は、四国では8種類ほど自生していますが、すべて地生ランです。もちろんナツエビネもその1つです。 それが、なんと、神社の枯木の根元から6mほどの高さの枝の上で、花を咲かせていました。
 神社は川の傍にあって、周りは良く自然が残されており、いくつかの枯木にはシシンラン(イワタバコ科)がついています。 シシンランが咲く頃、毎年のように出かけるのです。
 今回もシシンランの花をカメラに収めようと、見上げていたところ、意外なものが眼に入った。 それが、このナツエビネです。立派な株で3本の花茎に花を咲かせています。周囲には、シシンランの株も写っています。

 世界には、200種を超すエビネ属 Calanthe が分布していますが、その殆どは地生種をされています。 しかし、少数ですが、着生種に分類されるものもあります。
 また、鹿児島県南部から東南アジアにかけて分布するレンギョウエビネは、「ときに樹幹にもつく」と手許の図鑑に書かれています。
 ナツエビネが朽ちかけた倒木の上に生えているのは良く見かけます。着生種の性質の強い種類だ、といって良いでしょう。

2012/8/28

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