ランの種蒔き


ヤラン(写真上)は、早春に花を咲かせるが、ちょうどそのころ種蒔きもする。 昨年の花が実を結んで今タネを撒いているのだから、まる一年を要しているわけだ。
 カヤランの果実は、一番の特徴は細長いことだ。 もうひとつ、タネを撒くには果実の殻を割ることが必須だが、カヤランは一か所が大きく裂けて開くことだ。

六裂開タイプ

@コケイラン Aエビネ Bベニカヤラン Cシュンラン Dクロムヨウラン Eカゲロウラン Fクロヤツシロラン Gヒメノヤガラ Hヤクシマヤツシロラン @コケイラン Aエビネ Bベニカヤラン Cシュンラン Dクロムヨウラン Eカゲロウラン Fクロヤツシロラン Gヒメノヤガラ Hヤクシマヤツシロラン それじゃ、普通の、あるいは多くのランの果実はどうか。右に6種類のランの果実を載せてある。 まだ、開裂していないものももあるし、タネを撒き終わって殻だけのものもある。 しかし、共通している特徴は、形はアメリカンフットボールに近い。 そして開裂するのは、6ケ所である。 これがラン科の果実の一般的な形であり、六裂開タイプと呼ぶことにする。

一裂開タイプ

Iマツラン Jムカデラン Kクモラン Lフウラン Mカシノキラン Nカシノキランの種子 Iマツラン Jムカデラン Kクモラン Lフウラン Mカシノキラン Nカシノキランの種子 カヤラン(写真上)は、 果実が、普通のランの果実がフットボールににた形をしているのと違って極端に細長い棒状である。 同時に一か所だけが裂開する。これを一裂開タイプと呼ぶことにする。
カヤランが一裂開タイプになるのは、細長い棒状の形態と関係しているのではないか、と最初は思った。
 しかし、これは違った。なぜなら、左の写真のように一裂開タイプが次ぎつぎに5種見付かったが、 それらは形態はごく一般的なフットボールに似た果実だから。
 これまでに確認できた一裂開タイプは、全部で6種であるが、これらはすべて着生ランであり、地生ランは一種もない。 地生ランは全て六開裂タイプである。
 だから、果実が六開裂タイプになるか、一裂開タイプになるかは、その形態ではなく、 地生かまたは着生かという生態こそが関係していることを思わせる。
 一裂開タイプは、一か所のみ裂開する特徴のほか、綿のような塊が詰まっていることである。 これはタネの一部ではない。タネは写真Nに見られるように微細な粒状である。

 それでは、この綿状のものはどんな役割をしているか
 1、一裂開タイプは一か所が大きく、しかも下向きに裂開するから、タネが一遍に落下することになる。 綿状の塊は、これを防いで、タネを徐々にバラ撒くようにする役割をしているのではないか、ということである。 しかし、それなら最初から六開裂タイプにしておけば良いではないか、という疑問が起こる。
 2、次に考えられるのは、タネと一緒に飛び散って樹皮に付着するのを助けているのではないか、ということだ。 着生ランのタネは地面まで落ちたらお仕舞だから、なんとしても、地表まで落ちる前に、どこかの樹皮に付着することが大事だ。 綿状のものが着生ランの果実にのみ見られることからすれば、その根拠を着生という生態と関連ずけて考えるのは当然なことである。 一か所が大きく裂開するから綿状の詰め物が必要になったのではなく、 綿状の塊ができたから一裂開タイプになる必要があった、と考えるべきではないか。 (六裂開タイプのような狭い裂け目からは飛び出すことができない)
 3、3番目に思いついたのが、綿状の塊は防寒の役割をしていることだ。 一裂開タイプのランは全て、結実した翌年にタネを撒く(ほとんどランが結実した直後に裂開する)。 寒い冬を越す必要がある。(カヤランは翌翌年に開裂するから、二冬を超す必要がある)  地表より樹上の方が寒さも厳しいだろう。ランの微小な種子はこの寒さで命を奪わかねない。 綿は防寒服の役割を果たすことは間違いないだろう。


無裂開タイプ

Oツチアケビ P 小鳥が啄んだ跡 Q果実の横断面 R種子 Oツチアケビ P 小鳥が啄んだ跡 Q果実の横断面 R種子  ランが種蒔きするとき、6裂開タイプと無裂開タイプがあるといったが、 実は、ほかにもう一つ違うタイプがある。 それは無裂開タイプである。
 ランはタネを撒くときに、果実が裂けて、埃のような微細なタネを風に乗せて飛ばす、これが普通だ。 しかし、例外はツチアケビである。無裂開タイプは全く裂けない。タネを飛ばさない。 鳥が啄んで(写真P)、タネは鳥の糞に交じってばら撒かれる。鳥の体内を通ることによって発芽率があがれるそうである。
参照 「ツチアケビの実を喰うものは?」

2019/03/08


追記:
ムギラン ムギラン
ムギランは、六裂開タイプであった。
着生ランだから、一裂開タイプになるのではと期待(?)もしたが・・・
これまでに確認できた範囲では、着生ランのうち、
6種が一裂開タイプであり、
3種が六裂開タイプである。
マメヅタラン、ミヤマムギラン、ツリシュスランの3種は未確認 である。

2019/03/11





以上、四国に分布するランを3つのタイプに仕分けると、次のようになる。
六裂開タイプ 地生ラン
およびセッコク、キバナセッコク、ムギラン
一裂開タイプ 着生ラン
ただしセッコクとキバナセッコク、ムギランを除く。
なお、マメヅタラン、ミヤマムギラン、ツリシュスランは未確認
無裂開タイプ ツチアケビ、ショウキラン、キバナノショウキラン

2019/03/08

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