和名 アワムヨウラン  阿波無葉蘭
発見地が阿波(徳島県)であることによる。
学名 Lecanorchis purpurea Masamune
 もともと、Lecanorchis trachycaula Ohwi として、1965年に発表された。
 しかし、ムラサキムヨウランと同一であるとされたので、先(1929年)に発表されたムラサキムヨウランの学名 L. purpurea に優先され、L. trachycaula はその異名となった。
▼ もっとみる 以下、末次 facebook 2018-7-18から引用
1929年に,正宗巌敬は,「flos purpureus」,つまり「花は紫」の2語で,ムラサキムヨウランLecanorchis purpureaを屋久島から発表しました.しかしあまりにも判別文が短いことから,この名前は裸名扱いにされていました.
また正宗はタイプ標本も指定しなかったので,その実態はよくわかっておらず,紫色のムヨウランとして最も有名なクロムヨウランL. nigricansと考えられていました.
しかし,正宗がムラサキムヨウランを発表した当時,花が紫色のムヨウランは記載されていなかったので,「花は紫」の2語は,種を識別する形質になりえるはずです.つまりムラサキムヨウランは,(タイプ標本はないものの)当時の命名規約上は有効に発表されたと考えるのが妥当です.
単純に考えると,クロムヨウランは,ムラサキムヨウランの2年後に記載されているため,L. purpureaの記載が有効の場合,クロムヨウランの学名がL. purpureaになると思えます.しかし正宗本人が後年発表した線画を確認することができ,ムラサキムヨウランがクロムヨウランでないことがわかりました.
この線画から判断すると, 1965年に記載されたアワムヨウランL. trachycaulaと同一であることがわかりました.さらに1893年にシンガポールで記載されたL. malaccensisも同種の可能性が残りました.
L. malaccensisと同一だった場合は,先に記載されたものに優先権がありますから,L. purpureaが有効な記載でも,使うべき学名の変更はないことになります.一方で,L. trachycaulaとのみ同一だった場合は,アワムヨウランの学名の優先権は,L. purpureaにあることになります.
しかし,L. malaccensisもややこしい種で,種の特徴を記した記載文はある程度詳しいものの,肝心のタイプ標本の花が脱落しており,タイプ標本自体を用いた詳しい検討は不可能な状況でした.
そこでタイプ産地付近で採取された別個体において,L. malaccensisの検討を行ったところ,L. malaccensisとL. purpureaは別種であることがわかりました.つまり,L. trachycaula はL. purpureaのシノニムになりました(和名は広く使われているアワムヨウランそのままでよいと思います).


分布 本州(和歌山県)、四国(徳島県)、九州、琉球列島、伊豆諸島。外国では、台湾。
生態と形態 常緑広葉樹の林床にはえる。菌寄生植物で、まったく葉緑素を待たない。
茎は、地上部が冬も残り、翌年途中から、新たな芽が出るので、分枝した形になる。全体に短い突起ができる。
花茎は高さ20〜50cmとなり、上部に多数の花を密につけるが、一度に開花するのは1個(まれに2個)だけで、開花せずに終わるのもある。 花色は淡い黄褐色で、唇弁は匙状、白色で、やや赤紫色を帯びる。  ▼ 花の形態をみる。



@=背萼片
A=側萼片
B=唇弁
C=側花弁
D=蕊柱


花被片は、ほぼ同長さで、12〜17o。
唇弁は、匙状で先端部で3裂する。


花期 6〜9月。開花期間は長いが、個々の花は一日花で、午後には閉じるので、開花した花を見るのは容易ではない。
参考文献・サイト
Neotypification of Lecanorchis purpurea with the discussion on the taxonomic identities of L. trachycaula, L. malaccensis, and L. betung-kerihunensis(末次 2018)


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椎の木などの照葉樹林に、生えている。

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冬も地上部の茎が残り、翌年に、その茎の途中から新しい花茎が出てくるので、分枝したように見える。

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角度を変えて撮したもの。 (画像の上にカーソルを置くと拡大する。)

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全体に、鋭くて小さな突起がある。

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果実

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