和名 ハルザキヤツシロラン 春咲八代蘭
学名 Gastrodia nipponica (Honda) Tuyama
分布 本州(東海地方以西)、四国、九州、琉球列島、伊豆諸島。
生態・形態 暖温帯〜亜熱帯の常緑広葉樹林に生える。菌寄生植物で、まったく葉緑素を持たない。
花期の茎は、高さ3〜5cmで、頂部に1〜3(まれに〜5)個の花が集まって付く。
花は褐色で、萼片と側花弁が合着して筒状で平開しない。
受粉すると、花柄が急速に伸びて、高いものは40cmほどにもなる。  ▼ 花の形態をみる。



@=背萼片
A=側萼片
B=唇弁
C=側花弁
D=蕊柱
E=子房
F=花柄

萼片は、完全に癒着していて萼筒(約20o)となる。その先端部で3裂して、背萼片と側萼片となるが、裂け方は浅く大きく開くことはない。
側花弁(約6o)も萼の先端部から派生する。
左上は、萼の側面を切り取って内部を見たもの。左下は、萼の展開図。


花期 4〜5月。四国では4月下旬から。
参考文献・サイト 四国におけるハルザキヤツシロラン,アキザキヤツシロラン及びクロヤツシロランの分布


2014/5/2

 ハルザキヤツシロランは、椎の木などの照葉樹林に生える。背は低いし、色は落ち葉に溶け込んでいる。
 這いつくばるようにして、目を凝らして探さないと見つけるのは難しい。 この写真では、5株生えているのがお判りだろうか。


2012/5/3

 花は筒状であるから、唇弁や蕊柱をこれだけ良く見せてくれたら、幸運というもの。
 天候や気温、湿度、時間などの条件に左右されのかも知れない。


2011/5/7

 2個の花が反対側に向かって咲くのが典型的な形である。1個も3個もあり、まれに4個5個と咲かすこともある。


2011/5/2

蕾の状態。4月下旬から地表に姿を現し始める。


2012/5/26

 5月後半には、もう、果実期に入る。
 果実は、遠目には真っ黒に見えるが、近寄って見ると、焦げ茶色あるいは栗色である。

 果実は地表から相当高くなっている。30cmを超すこともある。少しでも遠くへタネを飛ばす算段である。
 ストローのように伸びているのは花柄の部分であって、花茎が伸びる訳ではない。


2008/5/28

 5月下旬には果実が裂けて、タネを飛ばしている。
 タネを撒き終わると、ハルザキヤウシロランのこの年の役割は終り、地表から姿を消す。


 

2012/5/6

 左側の株は4つの花を付けているし、右のほうは5つもの花を咲かせている。
 四国には、ハルザキヤツシロランの他に、秋に咲くアキザキヤツシロランとクロヤツシロランがあるが、本種の花数がいちばん少ない。5個も咲いたら例外的な数である。
 参考までに、手元の図鑑 カラー版 野生ラン(家の光協会発行) には「花は少なくて1〜2個」と書かれている。また、 日本のランハンドブック@低地・低山編(文一総合出版) のほうには「花序あたり1〜3個の花をつける」としている。


2013/5/1

この株は、4個の花を付けている。


2007/5/13

 花は、終わりに近くなると、花被片が、腐るように、あるいは、溶けるように無くなる。 「散る」とか「ポトリと落ちる」といった表現は、この花には当てはまらない。

 

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花5個咲かす!

 手許の図鑑「カラー版 野生ラン(家の光協会発行)」のハルザキヤツシロランの項には、花数は「1〜2個」と書かれていました。 左の株は4個、右は5個の花をつけている。
2012/5/6撮影
左の株は4個、右は5個の花をつけている。2012/5/6撮影

 しかし、3個の花をつけた株は、そんなに珍しくありませんので、一昨年、「2個」を消して「3個」と書き加えました。

 昨年の春、「今年はたくさん出ているようだ」という友人の案内で自生地を見て廻りました。そこで、5つ花をつけたのが見つかりました。 そのすぐ隣の株も4個つけていました。
 今年の春は、別の場所を訪ねましたが、ここでも5つ花を咲かせている株が見つかりました。
 友人は、「6個のもあるはずだ」と言っていますが、可能性がないとは言えません。
 ハルザキヤツシロランの花の数は年にもよりますから、一概には言えませんが、この辺りでは、1個だけのもあるが、2・3個が標準的なところで、4個もあり5個もまれにある、と表現して良いでしょう。

2013/10/16

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