和名 ヒメノヤガラ 姫の矢柄 オニノヤガラと比べて小さく可愛らしい。
学名 Hetaeria shikokiana (Makino & F.Maek.) Tuyama
従来は、Chamaegastrodia shikokiana Makino & F.Maek. としていた。
分布 本州(岩手県以南)、四国、九州、琉球列島、伊豆諸島。外国では、ヒマラヤ、中国(チベット・四川省)、朝鮮半島南部。
生態と形態 暖温帯の広葉樹林やスギ林に生える。菌寄生植物で葉緑素を持たない。
地下茎から花茎が直立し、花期の高さは5〜20cmとなる。
花茎、花とも全体が橙(だいだい)色であるが、赤味の強いものや黄色に近いものまで変化がある(とくに初期には赤い)。
花は5〜15個つく。子房と花被片は蕾のときは花茎に沿って直立しているが、開花時期になると花被片だけが外側に直角に曲がる。 花柄子房は捩れないので、唇弁が上になる。筒状で、先がわずかに開く。 ▼ 花の形態をみる。
@=背萼片
A=側萼片
B=側花弁
C=唇弁


萼片と側花弁は3〜4o。
唇弁は、6.5o、先端部が広がりT字型となり、上側(背萼片は下側)に付く。
花被片は、平開せず、重なり合って筒状となる。
(従って、蕊柱は右の写真では見えない。)

花期 7〜8月


2010/7/8

 こんなに沢山のヒメノヤガラが一枚の写真に収めることは、いつもいつもはできない。

 両側の株はまだ蕾。真ん中のは、先端に3つの蕾を残して、開花している。

 

 ドームを縦断したような形の唇弁は上位(背萼片は下位)になっている。


2010/7/10

 暗いスギの落ち葉の間から出てきたばかりのヒメノヤガラは、全体が燃えるように赤い。
しかし、場所によっては、こんなに赤くはない。また、開花時期になると、色が褪せてくる。


2010/7/16

 開花直前の姿。この時期のヒメノヤガラは、独特の姿をしていて、面白い。


2009/7/26

果実期

2005/11/2

果実が裂けてタネが出ている。

2013/7/24

 

地上に、出てきたばかり6月中旬〜7月上旬

蕾はまだ小さくて、花茎に群がるように密着しているが、苞葉の下に隠れていて、見えない。

 

蕾が大きくなる7月上旬〜7月下旬

蕾が大きくなると、苞葉を押しのけて、ヒメノヤガラ独特の恰好を現す。子房の上に花冠(萼片と花弁)になる部分が乗っかっている。花冠が直角に折れて、外側に向くと、開花はもう近い。

 

開花期7月中旬〜8月上旬

下の蕾から上へと順に開花する。花が開くと、唇弁が上になっているが判る。この頃には、全体に赤みが褪せている。

 

果実期7月下旬〜

短期間のうちに、果実になり、裂けて、タネを飛ばす。

 

唇弁が上になる

 ヒメノヤガラの花は、唇弁が上になっていることを知ったのは、昨年のことです。 手元の図鑑に「唇弁は上に位置し・・・」と書かれているのを読んで、あらためて撮りだめした写真を見直した次第です。
 しかし、この花は筒状であまり開きませんし、小さい上に薄茶色一色ですから、その構造はわかりにくい。 よそ様のホームページやブログなどを検索しても、はっきりと解る写真は見つかりません。 私の撮ったのも例外ではありません。
 日本のランで、唇弁が上になるのは珍しく、ほかには ホザキイチヨウランヤクシマネッタイランの仲間(属)だけではないでしょうか。  世界的にみても、唇弁上位の種は少ないようです。 「世界のラン科植物」を開いて、ぜひご覧下さい。
 唇弁が上になる状態を「倒立」を書いた図鑑も見ますが、人間が逆立して唇が鼻の上になるのとは、わけが違います。 むしろ、この方が「もとの姿であり、基本的形態だ」といっても良いと思います。なぜ、唇弁が下になるように進化したのか、考えてみるのも面白いですね。

2012/8/28

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