和名 ホザキイチヨウラン 穂咲一葉蘭
花が穂状に咲き、葉は1枚として名づけたもの。ただし、2枚葉となる場合も多い。
学名 Malaxis monophyllos (L.) Sw.
属を分離して、Microstylis monophyllos (L.) Lindl. とする説もある。
種小名は「1枚の葉をもつ」という形容詞。
分布 北海道、本州(近畿地方以北)、四国、九州、琉球。世界的には、北半球寒冷地からフィリピンにかけて広く分布する。
生態と形態 高山の針葉樹帯などの林床に生える。夏緑性。
 地下に新旧のバルブが連なり、新しい茎は下部に1-2枚の葉をつけ、上部が花穂となって高さ10〜30cmとなる。
 唇弁が上に位置する特徴をもつが、さらに珍しいのは、花柄子房が360度ねじれた結果として唇弁上位になることである。
花期 7月〜8月


2008/7/13

唇弁は上に位置する。

子房は360度ねじれる。


2006/6/13

葉は1枚とは限らない。2枚のものもある。

「イチヨウ」はウソ!

 アリサンムヨウランは私は見たことがないのですが、図鑑によると「葉は2〜5枚」となっています。 「無葉蘭」の和名がつけられたのは、「最初に台湾の阿里山産の無葉の標本で記載されたため」だそうです。 素人の私が、地面に出たばかりのコケイランやサイハイランの花茎の根元に葉がないを見て、「腐生蘭だ!」と早合点しても、許されるでしょう。
充実した株には2枚の葉がある。 充実した株には2枚の葉がある。  これほど大きな勘違いではないのですが、ホザキイチヨウランの「一葉」にも問題があります。 数年前初めて出合ったとき、このランはまだ花茎が伸び始めた姿をしていました(左の写真)。 葉は2枚あります。1枚のもありますが、私はよく成長した株は2枚の葉をつけるのだろう考えました。
 家に帰り、図鑑をめくっても該当するものがありません。ホザキイチヨウランのページも見たのですが、 そこには葉が1枚の写真と「葉が1枚出る」との記載があるのです。結局友人の助けで正体にたどり着いたのですが・・・
 なお、ここでいう図鑑は「カラー版野生ラン 著者=橋本保他 発行=家の光協会」です。

2008/7/28

360度捻ってもとに戻る


 ホザキイチヨウランの特徴の1つは、唇弁が上になることです。 世界では約400種、日本では8種あるというヤチラン属の共通点だそうです。
 しかし、ホザキイチヨウランのかわっているのは、唇弁を上にするために花柄子房を360度も捩じっていることです。

 唇弁が上になるか、下になるかは、花柄子房が捻じれるか否かにかかっています。
 @ まったく捻じれずにストレートにいけば自然と唇弁は上になります。左の写真では一番上がそうです。これはホザキイチヨウランと同じ属Malaxisの一種です。
 A ラン科の花で一番多いのは唇弁が下になるものですが、唇弁を下にするためには、花柄子房を180度捩じる必要があります。二番目の写真オオヤマサギソウを見れば、花柄子房の捻じれが良く分かります。
 B ホザキイチヨウランのように花柄子房を360度捻じると、当然元の位置に戻ってしまいます。結果は、@の唇弁をまったく捩じらない場合と同じ唇弁上位となります。

 手許の図鑑には、7種のヤチラン属が載っていますが、唇弁上位という点では共通しています。ホザキイチヨウラン以外は、花柄子房をまったく捻らないストレート形の唇弁上位のように見えます。 ホザキイチヨウランだけが360度捻って、仲間に調子を合わせているわけですから、ひねくれ者というよりはお調子者というべきでしょう。

2008/7/28

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