和名 イヨトンボ 伊予蜻蛉 
発見された産地の伊予(愛媛県)にちなむ。
学名 Habenaria iyoensis (Ohwi) Ohwi
分布 本州(関東地方以西)、四国、九州。外国では、台湾。
生態と形態 暖温帯〜亜熱帯の、湿り気のある土手、法面などに生える。
根茎から茎が伸びて、基部に広倒披針形の葉を、3〜8枚、地面に接するようにロゼット状につける。
花期の高さは10〜25cmとなり、上部に3〜15個の花をつける。 花は淡黄緑色で、唇弁は3裂し、側裂片は捩じれて横に広がる。
▼ 花の形態をみる。


@=背萼片
A=側萼片
B=唇弁
C=側花弁
D=蕊柱
E=距

背萼片と側花弁は、ほぼ同長で3〜4o、頂部に集まって蕊柱を覆うように兜状になる。
側萼片は、背萼片とほぼ同長で、横に開く。
唇弁は、約4o、基部で大きく3裂し、中央裂片は下垂し、側裂片は捩じれて横に拡がる。
距は、約1p、下垂する。

花期 8〜10月。四国では、9月まで。


2009/8/29

 山奥へ続く林道の法面に生えていた。セメントで固めることもなく、削り取ったあとの地面がむき出しになっているので、イヨトンボの格好の住処になっている。

 3〜8枚の葉が、茎の元の方に集まってつき、地表にロゼット状に拡がる。これがイヨトンボの特徴の一つ。

 イヨトンボの名は、発見地の伊予(愛媛県)に因んで、牧野富太郎博士が付けた。 しかし、愛媛県の友人は皆「愛媛県には無い」という。四国では本家になくて、高知県と徳島県だけらしい

2014/9/3

 唇弁が、大きく3つに割る。中央の裂片は真っ直ぐだが、両側の裂片がくねくねと捩れる。







左は若い果実(2005/10/12)、右は殻(2005/1/16)


2008/9/6

 海岸線から、そんなに離れていない林道沿いに生えていた。いわゆる半日陰で、背の高い雑草の茂っていない隙間を住処としていた。
 イヨトンボは葉が根元に集まって、地表にロゼット状に拡がる。そのため、背の高い雑草が密集した中では住みにくい。

2015/9/2

 唇弁は大きく3つに割れる。中央の裂片は真っ直ぐだが、両側の髭のような裂片はくねくねと捩れる。

2012/9/13

 花粉塊が飛び出して、宙ぶらりんになっている。


2008/9/23

 山奥の小川の岸の岩の上に生えていた。大雨が降って増水すれば、おそらく、水に浸かるであろう。 岩の割れ目に根を張り、周りのスゲにも守られて、流されることはないようだ。


2008/10/3

果実期

 奥山の部落へ通ずる車道の脇の急斜面に生えていました。 土と小石が剥き出しになっています。 ぼろぼろ崩れることもなく、薄暗いせいか大きな草類は生えていません。
 ランは他の植物と競争せず、樹上にあるいは太陽の恵みの少ない薄暗い場所に隠遁して暮らします。 とくにイヨトンボは、3〜5枚の葉を地表に張り付くようにロゼット状に広げています。 たとえ芝のように背の低い草でも、その中でイヨトンボは生きていけないでしょう。
 ダンプカーも頻繁に行き交う道の法面ですが、数少ない居住地。どうぞ、拡張工事で削り取られたり、 セメントで塗り固められたりせられませぬよう。

 「トンボ」がつくランの名前は20ぐらいあります。 (「チドリ」の約30にはかないませんがね。)
 イヨトンボは、採取した自生地のイヨ(伊予=愛媛県)とミズトンボ属のトンボとを結合しただけと言えばそれまでですが、 このランの姿を言い表せてないようで惜しい。 両側へ曲がりくねり伸びた髭を見て、何かピッタリのあだ名を考えてやって下さい。

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