和名 カシノキラン(樫の木蘭) 樫の木に付くことに由来するが、それ以外の樹木にも着生する。
学名 Gastrochilus japonicus (Makino) Schltr.
分布 本州(千葉県以西)、四国、九州、琉球列島。外国では、朝鮮済州島。
生態と形態 暖温帯〜亜熱帯で、湿度の高い場所の常緑広葉樹や杉などに着生する。
短い茎から多数の細長い根をだして、樹皮に付着する。葉は2列に密に互生して、扇を拡げた形になる。
花茎は葉腋から出て、葉の下に垂れ下がって、4〜10個の花をつける。 花の萼片と側花弁が淡黄緑色で、開花後徐々に赤味が増してくる。唇弁は白地に紅褐色の斑紋がはいる。
花期 7〜9月


2008/8/22

やはり樫の木についているのが似合うような気もする。


2007/8/26

杉の小枝についた2株のうち、1株が花を咲かせていた。 枝が地面まで落ちるとカシノキランはすぐ腐ってしまうが、途中で引っかかったので、とりあえず今年は花を咲かすことができた。


2008/8/25

花が終わりに近づくと、赤みが増してくるようだ。

2009/8/24

今年も立派な花を咲かせている。昨年の花は2個の果実になっている。

2007/8/26

果実はまだ青い。これは昨年咲いた花のもので、種をまくまでにはまだ1年を要する。

2008/4/4

タネを飛ばしている。開花から2年近くたっている。

 

2015/8/26

 山深い谷の流れのすぐ側に生えている樫の木に、このカシノキランは付いていた。
 谷の両側は急な斜面になっているから、木の根元から少し離れた斜面に立てば、カシノキランは水平な位置にある。
 根元に降りて、木に寄り沿うように立てば、一番下の花は手の届くほどの高さにあって、下から見上げることになる。

 カシノキランは、4・5枚の葉を扇のように拡げていて、その下に、花房が垂れ下がっている。下から見上げれば、花を正面から見ることになる。


2015/8/26

 周りには、大きな古木もたくさん生えていて、高い所にカシノキランが着生しているらしい。
 下から仰ぎ見ても何も見えないが、その老木が落とした枝にカシノキランがよくくっ付いている。

 着生ランは地面まで落ちてしまうと、すぐにダメになってしまうが、地面から離れた位置に留まることができれば、数年は生き延びて花を咲かせ、実も着けることができる。

 

カシノキランの暮らしを見る

最初から見る

果実は2つに割れる

 カシノキランの果実は、2つに割れて大きく開く。 ランは果実は6か所に割れ目ができて、そこから種子が飛び散るのが普通だが、カシノキランは違う。 1か所が割れて、左右に大きく開く。 タネを撒くカシノキラン。下から仰ぎ見るようにして撮った。

クロヤツシロランの果実  まず、普通のランの果実は、ラグビーのボールのような形をしている。 6角形をしていて、角ごとに割れ目が入って、そこから種子が飛び出す。
 左の写真は、クロヤツシロランの果実である。 6か所が規則だだしく割れている。このような割れ方をするものは沢山ある。
 と言うより、殆どのランがそうであるが、ここでは、いくつか例示しておく(種名にカーソルを置くと、画像が現れる)。
シュンランシュンラン
クロムヨウランクロムヨウラン
コオロギランコオロギラン
サイハイランサイハイラン
ヒメノヤガラヒメノヤガラ
カゲロウランカゲロウラン

 ところが、カシノキランの果実は、1か所だけが割れて、2つに大きく開く。
2つに割れた果実(上)と種子(下)  カシノキランだけが、このような割れ方をするのではない。
カヤランカヤラン
クモランクモラン
なども、似たような割れ方をする。
 何故なのか?
 種子が大きくて、狭い割れ目からは出ることができない、かというとそうではない。
 綿のようなも(写真上)のは種子ではない。種子そのものは、この綿毛に包まれている。
 左の写真(下)を見ていただくと分かるのだが、種子はごく小さいのだ。 6か所に小さな割れ目ができても、飛び出すことは十分できる。

 カシノキラン、カヤラン、コモランは、いずれも着生ランである。 着生ラン限定の特徴である(着生ランすべてに共通するのではないが)。
 なぜ、このような割れ方をするのか?判らない。
 判らないが、高い樹に着生する生活様式に関係しているのではないか? と思うのだが、どうであろう。

2018/5/2

▼ 追伸:2018/5/10

 追伸:2018/5/10

 先日撮ったのが5月2日、12日経った今日撮ったのが、右の写真。
 綿毛の塊ようなのはまだ残っている。そして、タネも残っている。
 果実は大きく開いたので、綿毛はとっくに無くなっているかというと、そうではない。
 綿毛が絡まって、飛ばされないし、タネは綿毛に包まれている。  だから、一度にタネが飛び散ることはないのだろう。

 もしかしたら、タネは綿毛から抜け出して飛び散るのではなくて、綿毛に包まったまま飛び散るのかも知れない。
 綿毛と一緒の方が風に乗って遠くまで飛ぶことができるし、樹皮にくっ付くにも良いのではないかと想像する。

拾ったら、カシノキラン

 谷沿いの山道を歩いていると、良くカヤランが落ちています。特に道に落ちた杉の枝にくっ付いています。 この日もいつもの調子で「カヤランかな」と思って手にとった杉の枝に、 なんとカシノキランが花を付けていたのです。 落ちていたカシノキラン 落ちていたカシノキラン
 名は、「樫の木蘭」ですし、図鑑にも、カシノキランは「常緑広葉樹林の樹幹に着生する」と書かれています。 杉の枝にカシノキランが着いているのは、私には意外でした。
 カヤランとは、姿は一見似ています。これまで、カヤランと思って見過ごしてきたものの中に、 もしかするとカシノキランがあったかも知れないと、いま思っています。
 ところで、杉は、カシノキランにとって格好の住処でしょうか、それとも、植林で広葉樹が減ったため追われて、ここに居を構えたのでしょうか。

2005/8/21

やっぱり樫の木がお似合い

 拾った杉の枝についたカシノキランとの出会いの後、 樫の木で咲くカシノキラン 樫の木で咲くカシノキラン あちらこちら杉やら樫やら目を凝らして探してみましたが、一株も見つかりませんでした。
 ところが今年、最初の出会いの場所からそんなに離れていない樫の木についている株を発見。 そこは川縁で杉の植林もできなかったのか、わずかながら樫が残っており、その幹のあちこちにカシノキランはついていました。
 やはり、カシノキランには樫の木がふさわしいか、などと思っていると、地面に落ちたものもありました。 落ちているのはすべて杉の枝にくっ付いたものです。 すぐ側の杉の大木の枝にたくさん着生しているのではないでしょうか。 そこで花を咲かせ実をつけタネをとばしている、と想像したのですが、下から仰ぎ見てもなにも見えません。

2007/8/27

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