和名 ウスキムヨウラン 淡黄無葉蘭
今は「ウスムヨウラン」と呼ぶことが多いが、 命名者津山尚は「新種と認めてウスムヨウラン(淡黄無葉蘭)Lecanorchis kiusiana の名を与えた」と記載している。
学名 Lecanorchis kiusiana Tuyama
分布 本州(関東地方以南)、四国、九州、琉球列島、伊豆諸島。外国では、台湾、朝鮮済州島。
生態と形態 暖温帯の、常緑広葉樹(とくにシイ)の林床に生える。菌寄生植物で、まったく葉緑素を待たない。
花期の高さは、(7p〜)16p(〜30p)とななる。この属の中では、エンシュウムヨウランと共に、小型の部類に入る。
花茎の上部に2〜8個の花をつける。 花は、筒状〜半開して、わずかに唇弁が覗く程度の場合が多い。 花色は全体として淡黄褐色であるが、唇弁は反り返り、白地に先端部が赤紫色の毛がある。 花色には変異があり、濃い黄色のものは、品種として キバナウスキムヨウランと呼ばれる。
花期 5〜7月。四国では、6月まで。
参考文献・サイト
・ムヨウラン属の一新種(津山尚 1955)
愛知県のムヨウラン類(芹沢俊介 2005)


2011/5/31

 ここは神社の杜で、シイなど常緑照葉樹の落ち葉が降り積もっている。 こんな場所が、ウスキムヨウランのお好みである。

2011/5/31 2011/6/4 2011/6/4

 唇弁には、毛がびっしりと生えていて、その先は赤紫色に染まっている。 花は大きく開くことはないが、唇弁を覗き見ることができれば、ウスキムヨウランだと判定できる。


2007/5/26

 結実した時は、昨年の花茎と果実の殻は翌年まで残るので、今年の新しい花と一緒に見ることができる。


2011/6/6

 シイなど常緑照葉樹の里山を歩けば、良く見かける。 ここらでは、ムヨウラン属の中では、ウスキムヨウランが一番ポピュラーである。

2007/5/30

 照葉樹の落ち葉を敷き詰めたような場所を住処とする。

2007/5/30 2007/5/30

 小さな蜂が唇弁の上に止まっていたが、ポリネーターの役割を果たしているのか?

2008/5/28

 唇弁の色形を見れば、ウスキムヨウランだとわかる。 しかし、唇弁に密生する毛の先端部の、赤紫色は濃淡の変化がある。

2008/5/6

 新しい花茎が出てきた所である。 アブラムシや梅雨時の長雨にやられて、花を咲し、実をつけるまでに至らないことも多い。

2009/5/1

 結実したら、花茎と果実の殻は、翌年の花の時期まで残っている。


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ウスキか、ウスギか

 このページを作ったとき、タイトルは初め「ウスキムヨウラン」としてありました。 愛用している手許の図鑑(カラー版 野生ラン 著者:橋本保ほか 発行:家の光協会)を参考にしたものでした。
 ところが、書物やインターネットで見るのは「ウスギムヨウラン」と濁点がついたものが圧倒的に多い。 そこで数年前に、寄らば大樹の陰で、そちらに変更しました。
 最近になって、ムヨウラン属に詳しい方から「命名者の津山先生はウスギムヨウランと書かれるのを快く思っていなかった」ことを知らされました。 原記載を調べてみると、「新種と認めてウスキムヨウラン(淡黄無葉蘭)Lecanorchis kiusiana の名を与えた」と書かれていました。
 学名には厳格な命名規約があり、命名者が後でスペルの間違いに気づいても訂正できないが、和名には一切決まりはないそうです。 しかし、混乱を避けるためにも、命名者がつけた和名を尊重して、よほどの理由がない限り変更すべきではない。 そう考えて、もとの「ウスキムヨウラン」に戻しました。

 



 参考までに:
ウスムヨウランと書かれているもの
新牧野日本植物圖鑑(北隆館)
日本産ムヨウラン属の検討 (1990, 橋本保)
ウスムヨウランと書かれているもの
日本の野生植物―草本 1 (平凡社)
原色日本植物図鑑 草本編 (保育社)
愛知県のムヨウラン類(2005, 芹沢俊介) この論文には、 和名は当初ウスキムヨウランと命名されたが、現在では
「ウスギ」と濁ることが多く、淡黄色という意味でもその方が伝わりやすいと思われる。
と書かれています。

2011/2/27

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