和名 エンシュウムヨウラン 遠州無葉蘭
発見地の遠州(静岡県)にちなむ。
学名 Lecanorchis suginoana (Tuyama) Seriz.
当初は、ムヨウランの変種 L. japonica var. suginoana Tuyama として発表された(津山尚 1982)。
その後、ウスキムヨウランの変種 L. kiusiana var. suginoana (Tuyama) T.Hashim. とされた(橋本保 1990)が、 現在は、種の階級で区別する説(芹沢俊介 2005)が有力である。
分布 本州(関東、東海地方)、四国、九州。外国では、台湾。
生態と形態 暖温帯の常緑広葉樹やスギの林床に生える。菌寄生植物で、まったく葉緑素を待たない。
花茎は、高さ(15p)〜20p〜(30p)となり、上部に3〜6個の花をつける。この属の中では、ウスキムヨウランと共に小型の部類にはいる。
花は筒状で、ほとんど開かないことが多く、条件の良い時に、1花茎のうち、1つの花が半開する程度である。
花色は、淡褐色で、唇弁は、反り返らず、毛も黄色である。唇弁の色形でウスキムヨウランと見分けることができる。
花期 5〜6月
参考文献・サイト
ムヨウランの1新変種エンシュウムヨウランを巡る問題(津山尚 1982)
日本産ムヨウラン属の検討(橋本保 1990)
愛知県のムヨウラン類(芹沢俊介 2005)


2010/6/11

真っ黒に見えるのは、前年の花茎と果実の殻。

2009/6/6

 花は、ほとんど開かない。唇弁を、やっと、覗き見ることができる程度である。
 気象の好条件と運に恵まれれば、たまに綺麗に咲いた花を見ることができる。 (次のページを参照)

2010/6/11 2006/5/21 2010/6/11

エンシュウムヨウランの唇弁の毛は、ウスキムヨウランのように赤紫色に染まることはない。


2012/11/20

果実(タネを飛ばした後)

花被片の付け根のリング状の膨らみが、エンシュウムヨウランは顕著である。

2012/6/11

 初めて開いた花を見ることができた。これまで見てきたものは、筒状でほとんど開かないものばかりであった。 ( 1頁を参照

 気難しいランで、気象条件が良くて運にも恵まれないと、このように咲いた花にはお目にかかれない。


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花の「半開状」とは?

 エンシュウムヨウランの命名者は、産地で見た様子を次のように書いています。 (ムヨウランの1新変種エンシュウムヨウランを巡る問題 津山尚 1982

花は広く開いていて、花被片の先端が多少外方に反り返っているものもあったが、多くは半開状であった。
半開状というのは3つの場合があって、満開前のものと、満開時を過ぎているものと、 もう一つは花期が丁度梅雨期に当たるので、花被片が雨滴や霧の水分を含みその重さで満開せずに終わるものとがある。


 私がこれまで見てきた多くは、唇弁の先端をわずかに覗き見る程度です。これは「筒状」と呼ぶのが妥当かと思います。
 しかし、命名者は「多くは半開状であった」と書いています。
 筒状=半開状とすることが許されるならば、命名者が見た産地の状態と、私が見慣れている自生地のそれとが一致するのですが、どうでしょうか。

2013/6/3

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