和名 クマガイソウ 熊谷草 袋状の唇弁を、熊谷次郎直実の背負った母衣に見立てた。
学名 Cypripedium japonicum Thunb.
分布 北海道(南部)、本州、四国、九州、伊豆諸島。外国では、朝鮮半島南部、中国東部。 台湾に分布するタイワンクマガイソウは、別種 Cypripedium formosanum Hayata とされる。
生態と形態 落葉広葉樹、杉などの林床に生える。 地下茎を長く伸ばして拡がり、群生する。
地下茎の節から地上に茎をだし、頂部に2枚の大きな葉を対生状につける。 葉は扇形で、放射状に多数の脈と襞ができる。
茎頂から花茎が伸びて、1(まれに2)個の花をつける。 唇弁は、袋状で、白色に淡い赤紫色の模様がある。 この模様がない品種をキバナクマガイソウという。 ▼ 花の形態をみる。



@=背萼片
A=側萼片
B=唇弁
C=側花弁
D=蕊柱
E=子房

背萼片は、長さ約4p。
側萼片は、長さ約4p、完全に合着して1枚になって下垂する。(「下萼片」と呼ぶべきか。)
唇弁は、長さ約5p幅約3pの袋状である。


花期 4〜5月


4/22 4/27
4/13

春いっせいに地上に現れる。杉の植林に群生することが多い。

4/22
10/3

果実

11/17

冬が近づくと地上部は枯れ始める。

 

4/25

二つの花を付けるものもある。

果実期

 

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 キバナクマガイソウ

5/2

これらの写真の原画は友人から提供を受けました。この自生地は盗掘のためすでに絶滅したとのことです。
現在では四国内で、キバナクマガイソウの自生地は確認できていません。

普通のクマガイソウの唇弁に見られる赤紫の模様はなくて、花全体がごく薄い黄緑色をしている。
開花から日にちが経過するに従って、黄色が薄れて白花に近くなる。

 ここ数ヶ月、クマガイソウの花の写真を撮りたくて、歩き回りました。 苦労の末、あるいは偶然に数十の株に出会いましたが、 花も蕾もありません。ただ一つ、友人に教えてもらったところの一株が花をつけていました。 クマガイソウは、その特異な二枚の葉で太陽の恵みを受け止めて養分を貯めます。 そして、先ず栄養繁殖で株を増やして群落を作る。群落が充実して、はじめて花をつける。 このような仕組みになっているように思います。素人考えですが。 私が写真に撮った開花株は、15株ほどの集まりから数メートル離れてぽつんと咲いていました。 これは例外のように思えますが、私にとっては初めての野生の花で、ありがたい贈り物でした。

2005/5/17

 ところで、クマガイソウはやはり変わりものです。どこがと言えば「花」をあげる人が多いかもしれませんが、 私は「葉」を一番にあげます。 唇弁が袋になった花はアツモリソウ属に共通しますし、外国では、 パフィオペディラム属フラグミペディウム属 も似たような袋をもっています。2万5千種を超える 世界のラン科植物は、 昆虫やハチドリを誘うために、その花々は千変万化です。
  しかし、クマガイソウのような葉は、そうそうないと思います。 葉脈は葉柄の先端から出て、途中は広がり、葉先で絞られる、これが基本です。 クマガイソウはこの原則?に反して、葉脈が一番広がったところで切り取られています。 まるで団扇の骨のような感じです。 クマガイソウはその葉の形をもって、ラン世界の異端児と言えるでしょう。
今年の春、ドイツの植物学者(だと思う)からの依頼でクマガイソウの結実率を調査をし、それをまとめたのが下記の表です。
 3つの自生地で、それぞれ2uぐらいの区画を作り、 次の3つに分けてカウントしました。
       @花をつけなかったもの 
       A花をつけたが結実しなかったもの 
       B結実したもの
場所によって、結実率が大きく異なるのはどうしてなのでしょう?

  自生地
A
自生地
B
自生地
C
自生地
A+B+C
a  地上茎の数 (2u当たり)9575103273
b  a の内、花をつけなかったもの332856117
c  a の内、花をつけたもの624747156
d  c の内、結実したもの157224
結実率 (d/c)24%15%4%15%


2008/7/29

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