花は咲かないものと観念する
クロムヨウランは「花はおそらく晴天の日、朝に平開する」と、家の光協会出版の「野生ラン」に書かれています。
幸い自生地が近くでしたので、5・6回以上もカメラを持って通ったのですが、蕾の写真しかものにできませんでした。 どうも日照り続きであまりにも乾燥していたのが災いしたのではないか、と今思っています。
2006/7/25
和名 クロムヨウラン 黒無葉蘭
茎や果実が黒光りしていることによる。
学名 Lecanorchis nigricans Honda var. nigricans emend. Suetsugu & Fukunaga
分布 本州(栃木・茨城県以西)、四国、九州、琉球諸島、伊豆諸島。
ただし、本種の他、変種関係にあるクロムヨウランおよびヤクムヨウランを含む広義のクロムヨウランの分布範囲を示す。
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全国的に見れば、トサノクロムヨウランの方が、クロムヨウランより広く分布し、優勢である。
四国(高知県など)では、両方の種が自生するが、ほとんどがクロムヨウランであり、
トサノクロムヨウランの自生地は数か所しか見つかっていない。
トサノクロムヨウランの命名者である澤完氏は、「高知県中部のラン科植物」の記載を見ると、
クロムヨウランについは、土佐市、伊野町、春野町、高知市(12ヶ所)南国市、香我美町、安芸市の18ヶ所の自生地を確認している。
これに対して、トサノクロムヨウランについては、確認できた自生地はわず高知市での2ヶ所のみである。
これは、高知県中央部という限られた範囲での分布であるが、
四国全体に拡げたとしても同様な傾向にあると推定される(あるいは、もっとトサノクロムヨウランの比率は少ない)。
私の経験でも、クロムヨウランの自生地は10ヶ所ほどあるに対して、トサノクロムヨウランの方は、友人に案内された3ヶ所のみであって、同じような傾向である。
生態と形態 常緑広葉樹の林床に生える。菌寄生植物で、まったく葉緑素をもたない。
花茎は、高さは、15〜30cmでとなり、上部に5〜10個の花をつける。
花色は、淡い黄褐色。唇弁は匙状で、ムヨウランのように3裂せず、先端部は紫色を帯びる。
本種は、蕾の状態で自家受粉して、開花することなく結実する(閉鎖花)。
開花するのは、変種関係にある
トサノクロムヨウラン var. patipetala である。
花期 7〜8月
参考文献・サイト
・高知県中部のラン科植物(澤完 1981)
・The taxonomic identity of three varieties of Lecanorchis nigricans(末次 2018)
・本物の「クロムヨウラン」は花が咲かない(神戸大学理学研究科)
今年も咲かなかった。日を変え、時間を変えて何度も通ったが、ついに開花の姿を見ることができなかった。
花は固い蕾のまま落ちるが、後に果実が残っている。
開花の姿は見ることができなかったが、幾株かが果実をつけていた。
果実が花茎に対して直角に近い角度でつく。これがクロムヨウランの特徴に一つである。
タネを飛ばした後
2006/7/25